外国人従業員を募集するときの注意点

 

国籍による差別の禁止

採用において「日本人のみ」・「外国人のみ」を対象とする求人を出すことはできません。また「アメリカ人のみ」「ベトナム人のみ」というような特定の国籍の外国人を対象とすることもできません。これらは国籍による差別として禁止されています。面接時にも「国籍」等の質問は行わないでください。

ただし、スキルや能力を条件とすることはできます。例えば、貿易事務や英会話学校講師の仕事を求人する場合に「英語ができること」、ベトナム人の雇用管理をするために「ベトナム語が話せること」を条件とすることは可能です。

労働法・入管法の適用

外国人従業員にも日本人と同様に、日本の労働法・社会保険法が適用されます。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災補償法、雇用対策法、職業安定法、労働者派遣法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法などがこれにあたります。これらに加えて、特に外国人には下で説明するように入管法上の在留資格による業種の制限があることに注意が必要です。

例えば、事業所・経営者さんの中には、外国人は安く雇用できるとお考えの方もいらっしゃいますが、最低賃金法は日本人と同様に適用されるため守らなければなりません。また、労働保険・社会保険への加入義務も日本人と同様です。

労働条件の明示

従業員を募集する場合には、特に後になってトラブルにならないように、労働条件についてはしっかりと明示しておかなければなりません。また、後になって言った言わないのトラブルにならないよう書面または電子メールにて明示するようにしてください。

  • 業務内容
  • 賃金
  • 労働時間
  • 場所
  • 期間
  • 労働保険・社会保険の適用有無

また、特に外国人との間でトラブルになりやすい、渡航費用の負担、住居の確保などは予め話合って明確にしていおいたほうがよいです。

参照:外国人労働者向けモデル労働条件通知書
(英語 ・中国語 ・韓国語 ・ポルトガル語 ・スペイン語・ タガログ語・ インドネシア語ベトナム語

外国人従業員のあっせん(職業紹介・人材紹介)

外国人労働者のあっせん(いわゆる人材紹介・職業紹介業者を通した紹介)についても、上記の国籍差別の禁止、労働法・入管法の適用、労働条件の明示などコンプライアンスが守られているか、きちんと適用に許可を得ている業者であるかを確認してください(無許可営業の紹介会社・派遣会社も存在します)。

外国人従業員を採用するときの注意点

ビザの種類・期限の確認

外国人従業員を採用する上でもっとも大切なことは、ビザ(正式には在留資格)の種類と期限を確認することです。外国人は日本人と違ってビザの種類によって日本で活動できることが制限されています。「働くこと」はその最たる例で、その種類(約30種類!)によって従事することができる業務内容が細かく規定されています。もし、「やってはいけない仕事」を行っていた場合、外国人本人は不法就労罪、雇用していた会社は不法就労助長罪に問われる場合もありますので十分に注意してください。

ビザ(在留資格)は、日本に滞在している外国人がもっている「在留カード(旧・外国人登録証)」をみればわかります。在留カードの「在留資格」の欄(どんな仕事ができるか)と「在留期間・満了日」(いつまでできるか)を確認してください。

参照:在留カード(入国管理局)

なお、現在日本に滞在しておらず日本に新たに呼び寄せようとしている外国人、短期滞在(観光など)だけ日本に滞在している外国人は、在留カードをもっていません。その場合は改めてビザ(在留資格)をとらなければなりませんので、その資格をとるための条件を満たすことができるかどうかがポイントとなります。

就労できるビザの種類(主なもの)

  • 技術・人文知識・国際業務(エンジニア、通訳翻訳、営業職など)
  • 教育(中学・高校などの外国人語学教員)
  • 技能(外国料理のコック、スポーツインストラクターなどの一部の専門職)
  • 興行(芸能人、歌手、スポーツ選手など)
  • 介護(介護福祉士)
  • 経営・管理(会社経営者、管理者)
  • 技能実習(技能実習計画にもとづく実習)
  • 特定活動(EPA看護師・介護士、ワーホリなど指定書に記載)

就労する仕事に制限のないビザの種類

  • 永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等(特に制限なし)
  • 資格外活動(留学生、外国人の家族のアルバイト)*但し週28時間の時間制限あり

参照:日本で就労できる外国人のカテゴリー(厚生労働省)

雇用契約書の作成

外国人の従業員であっても、雇用する際には労働条件を文書にした雇用契約書(労働契約書)を作成し、押印・署名をします。

使用者(雇用主の会社)は、労働契約の内容について、労働者(外国人従業員)に説明し理解してもらうことが必要です。できれば母国語に翻訳された契約書があればよいですが、日本語のみである場合には主な内容についてしっかりと理解できているかを確認してください。外国人従業員本人のみならず、雇用主の会社にとっても後のトラブルをさけることになります。特に、業務内容、労働時間、賃金、退職・解雇などに関する内容についてはしっかりと明示しておく必要があります。

参照:外国人労働者向けモデル労働条件通知書
(英語 ・中国語 ・韓国語 ・ポルトガル語 ・スペイン語・ タガログ語・ インドネシア語ベトナム語

労働法適用の理解と実施

特に日本語能力がまだ高くない外国人を雇用する場合、労働関係法・社会保険法の理解・実施の上での配慮が必要な場合が多いです。

労働法の適用

日本で働く上で、日本の労働関係法の基本的な知識を身につけておくことは、働く外国人本人にとっても、雇用する会社にとってもとても大切です。労働関係法については日本、欧米各国、アジア各国それぞれに内容がことなることもあり、加えて生活習慣は価値観も異なるためお互いの理解不足からトラブルになることもありえます。特に、下記のような点については日本の法律の基準を前提に雇用契約を結ぶさいにしっかりと話しあって明確に決めておくほうがよいです。

  • 賃金計算、税・社会保険の控除
  • 法定労働時間と残業代
  • 強制保管の禁止(旅券・金品など)

参照:日本で働こうとする外国人向けパンフレット(外国語)

安全衛生・健康管理

機械設備、安全衛生装置、保護具などの使用方法についてはきちんと理解してもらうことが必要です。外国語による表記や指導の徹底など行ってください。標識・標語・図解なども日本独特のものもありますので注意が必要です。また、上司からの指示などをきちんと理解できるよう日本語の習得にも務めてください。

健康診断の実施においても、場合によっては外国語対応な病院・施設等を手配することが必要となります。健康指導・健康相談についても同様です。

労働保険・社会保険の適用

外国人従業員にとって、日本の労働保険・社会保険の制度は複雑でなかなか理解しにくいところがあります。雇用する際に、源泉徴収を含め加入、納付、請求などについて理解できるよう説明に努めてください。特に、厚生年金については6ヶ月以上日本で勤務した外国人が帰国した際に保険料の一部を返金する「脱退一時金」制度があることなどは帰国前に制度の説明するのがよいです。

  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 健康保険
  • 厚生年金保険

参考のため、社会保険制度の外国語版説明を下記にリンクしておきますので、ご参照ください。

参照:社会保険制度の説明(日本語英語中国語韓国語スペイン語ポルトガル語
労災保険給付パンフレット(外国語版
離職者向けガイド(英語版)、失業給付のしおり(英語版

人事管理・福利厚生

日本の職場環境や人事管理の不透明さが、外国人従業員にとって理解しにくい部分があることが多いです。職場で求められている能力やコミュニケーション、人事評価基準や給与算定基準なども明確に理解しやすい形で説明することが求められます。

また、言語・商慣習など日本独特の文化に不慣れであることが業務の遂行上不利になっていることも考えられます。特に入社間もない時期には日本語習得や日本文化理解を学ぶ機会を用意することも求められます。

宿泊施設や食事、医療、文化施設などの福利厚生についても、外国人従業員がその情報を受け取り、利用できるよう工夫することが望ましいです。

外国人従業員の定着と離職時の対応

外国人従業員に長く働いてもらうためには、上記のような日本の法律、習慣などの理解を深めるとともに、その能力にあった就労環境や待遇に留意いただくのが望ましいと思います。

参照:高度外国人材活用のための実践マニュアル

また、特に一般の就労ビザをもって日本に滞在している外国人は離職・退職すれば原則として日本に滞在することはできなくなりますので(通例、離職後3ヶ月程度まで)、安易な解雇をさけてもらい、解雇する際にも再就職希望者には可能な限り援助に務めていただけたらと思います。現在はハローワークでも東京・大阪・名古屋に外国人労働者専門の雇用サービスセンターができています。

参照:外国人雇用サービスセンター(東京大阪名古屋

外国人雇用状況の届出

外国人の雇用・離職の際には、その氏名とビザ(在留資格)などの情報をハローワークに届け出ることが必要になります。これは、ハローワークが外国人労働者の雇用環境の改善と不法就労の防止などのために設けられているもので雇用対策法に基づき平成19年から始まりました。もし届出を怠ると30万円以下の罰金となるため十分に注意して下さい。

この届出の対象となる外国人労働者は、「外交」「公用」以外のすべての外国人です。外交は外交官、公用は外国政府所属の公務員なので、一般企業で働くほぼ全ての外国人が対象と思ってもらえば構いません。正社員のみならず、アルバイト留学生を雇うときも届出が必要となります。ただし、特別永住者(いわゆる在日韓国・朝鮮人等)は対象外となっていますので、届出の必要はありません。

参照:外国人雇用のルールに関するパンフレット(厚生労働省)
   事業主向け案内(厚生労働省)

届出の手続については、2つのパターンがあるため下記しておきます。

雇用保険被保険者の場合

新しく雇用保険の被保険者となる際に提出する「雇用保険被保険者資格取得届」の中(17~22欄)に記入欄がありますので、そこに記載して雇用保険を受ける管轄のハローワークに届出を行います。また離職の際も「雇用保険被保険者資格喪失届」の中(14~18欄)に記入欄がありますので、そこに記載して届出て下さい。

雇用保険被保険者でない場合

外国人雇用状況届出書という書式がありますので、記入してハローワークに提出してください。インターネット上でも届け出ることができます。

参照:ハローワークインターネットサービス(電子申請)

外国人雇用責任者の設置

外国人労働者を10名以上雇用するとっきには、「外国人労働者雇用労務責任者」を選任する必要があります(罰則はなし)。通常は人事課長などを充てることが多いです。